溶射技術は北九州・名古屋・大分・姫路の富士岐工産の溶射技術解説

解説・用語集

溶射とは、溶射材と呼ばれる材料を加熱して被施工物(基材)に吹き付け、皮膜を形成する表面処理法の一種である。熱源には燃焼炎やプラズマなどが用いられ、材料(溶射材)は液滴化されて、高速ガス流などによって処理対象である基材表面に吹き付けられる。

液滴や微粒子状になった溶射材は「溶射粒子」と呼ばれ、この粒子が基材表面で凝固し密着することで皮膜が形成される。溶射粒子が運ぶ熱量は小さいため、基材への入熱は小さく熱的影響は比較的少ないが、基材と溶射粒子の密着強度が溶接などと比べて弱く、通常はアンダーカットやサンドブラストなどの前処理によって基材表面を荒面化しておき、基材と凝固した溶射材との機械的な噛み合わせを十分に確保することで密着強度の向上を図っている。溶射粒子が凝固するまでに基材上に広がり凹部に入り込む時間的余裕を与えるために、基材の事前加熱も行われることがある。

塗装などと同様にマスキングにより対象物の特定の部分のみに施工できる。後処理として、自溶合金溶射時のフュージングや封孔処理がある。
近年では、非溶融状態の粒子を高速で吹き付けることで皮膜を形成する技術 (kinetic spray, cold spray) も溶射の一種として研究されている。


特性


1.皮膜は再溶融において合金中のBやSiがB2O3、SiO2となり、他の金属 酸化物を硼珪酸ガラスとして溶解浮上させるので、 酸化物の含有が極めて少なくなりしかも無気孔となります。

2.皮膜の粒子は互いに溶着すると同時に素地金属と相互拡散して、その中間に合金層を形成し溶着します。

3.Ni-Cr個溶体中に介在するCr硼化物、更にCを含有する合金では、Cr炭化物によって高硬度を示し、優れた耐摩耗性を有します。

4.NiおよびCo基合金であることから耐酸化性、耐食性に優れています。


溶射材料


種別 JIS記号 化学成分% 備考 硬さ
HRC
相当銘柄
Ni Cr B Si C Fe Co その他
Ni系 MSFNi 1 残部 0~10 1.0~2.5 1.5~3.5 <0.25 <4 <1 <4Cu 研削容易、耐食、耐熱性 15~30 メテコ12C
フクダロイFP30
MSFNi 2 残部 9〜11 1.5~3.5 2.0~3.5 <0.5 <4 <1 超硬バイト仕上可能。耐食、耐熱性 30~40 フクダロイFP 4
MSFNi 3 残部 10〜15 2.0~4.5 3.0~4.5 0.4
0.7
<5 <1   超硬バイト仕上可能 であるが研削が 望ましい。耐食、耐熱性 40~50 メテコ 14E
フクダロイFP 5
MSFNi 4 残部 12〜17 3.5~5.0 3.5~5.0 0.4
0.9
<5 <1

<4Mo
<4Cu

研削が適当。
耐摩、耐食、耐熱性
50~60 メテコ 16C
フクダロイP 61
MSFNi 5 残部 15〜20 2.0~4.5 2.0~4.5 0.5
1.1
<5 <1 研削が適当。
耐摩、耐食、耐熱性
55~65 メテコ 18C
フクダロイFP 6.7
Co系 MSFCo 1 10〜30 16〜21 1.5~4.0 2.0~3.0 <1.5 <5 残部 <10W 研削が望ましい。
じん性があり
高温での耐食、耐摩耗性
35~50 メテコ 18C
フクダロイFP 150
MSFCo 2 0〜15 19〜24 2.0~3.0 1.5~3.0 <1.5 <5 残部 4〜15W 研削が適当
高温での耐食、耐摩耗性
50~65 デロロ
フクダロイFP 160
WC系 MSFWC 1 20~80WC MSCo 1 残部 耐摩耗性が特に優れている。 45~55 メテコ35C
MSFWC 2 20~80WC MSFNi 4またはMSFNi 5 残部 55~65 メテコ34F
メテコ36C

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現在、各種の溶射プロセスが開発、実用化されています。
各プロセスの特徴と限界を的確に把握し、溶射設計する事が基本であります。


用途


  基本構造 皮膜断面組織





O2C2H2を熱源として、
圧縮空気で溶射する。





O2C2H2で溶射したあと、
加熱溶着する。





プラズマジェット
(高温、高速) を熱源
として 高融点材料
を溶射 する。







O2-C3H6(又はH2)の
ガス燃焼 フレームを
熱源として、超音速
(約1380m/秒)の
ガスジェットで、
主に高硬度材料を
溶射する。

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特性


高速フレーム溶射システムは、精密にコントロールされた酸素ー燃料ガス(プロピレンあるいは水素)に高い運動エネルギーを与え、緻密で気孔が少なくさらに付着力の大きな皮膜を作ることが可能です。


【皮膜の特徴】


●大きな付着力 ●低気孔率 ●高硬度(炭化物系サーメット) ●なめらかな溶射肌


溶射材料


合金、炭化物系サーメットなど代表的な溶射材料(メテコ社のプロセスマニュアルより引用)

  組成 主な特性 付着力(㎏/cm2) 硬さ
寸法復元と耐腐食用 オーステナイト系ステンレス鋼非鉄金属の寸法復元寸法復元870℃以下の耐酸化 540℃以下の耐食、耐キャビテーション摩耗耐粒エロージョン摩耗 600 Rb 89
アルミブロンズ 非鉄金属の寸法復元 400 Rb 41
Ni-Cr-Fe合金 寸法復元
870℃以下の耐酸化
750 Rc 29
トライポロジー用 Ni自溶合金 815℃以下の
耐摩耗、耐フレッティング摩耗
耐粒エロージョン摩耗
650 Rc 50
50%C-Co/50%Ni自溶合金 540℃以下の
耐摩耗、耐エロージョン摩耗
耐粒アブレ-ジョン摩耗
耐フレッティング摩耗
850 Rc 53
WC-Coサーメット 耐摩耗、細かな溶射肌 850 Rc 64
WC-17%Coサーメット 耐フレッティング摩耗 900 Rc 63
高温腐食・耐磨耗性・耐酸化用 Co基超合金 耐食
980℃までの耐酸化
650 Rc 55
Cr3C2-25%Ni・Crサーメット 540~815℃までの
  耐アブレッシブ摩耗
耐フレッティング摩耗
850 Rc 55
Cr3C2-7%Ni・Crサーメット 540~980℃までの
耐フレッティング摩耗
耐粒エロージョン摩耗
750 Rc 53
Cr3C2-50%Ni・Crサーメット 540~815℃までの<
耐アブレッシブ摩耗
900 Rc 50
特殊用途用 Ni基超合金 875℃までの
耐食、耐摩耗
500 Rc 38
Ni-Al合金 980℃までの耐酸化
寸法復元、下地溶射皮膜
600 Rc 25

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特性


溶射皮膜は緻密で粒子間結合、付着力が強い。溶射肌は滑らかで酸化物や不純物の混入も少ない。
またノズル近傍は高温でありますが、輻射によって急速に熱は発散し、被溶射体は低温(200℃以下)に保たれます。


プラズマ溶射装置

プラズマ溶射装置 METCO PLASMA FLAME SPRAY SYSTEM COMPLETE INSTALLATION


溶射材料


金属、合金、セラミックス、炭化物、サーメット等(メテコ社で開発された材料の一部を下表に示す。)

材料№ 組 成 主 な 特 性 融点℃ 熱膨張率
(×10-6/℃)
硬 さ
43 Ni-20%Cr 耐熱、高温耐食用 ≒1400 4.3 Rb 81
61 99.5%以上W 不活性あるいは還元雰囲気中で耐高温 ≒3410 6.5 Ra 45~50
62 99.5%以上Ta 高温用、鋼に自己結合 ≒3000 6.5 Ra 70
63 99.5%以上Mo 耐摩耗、溶融cu、鋼にも強くアークアブレ-ジョンにも強い ≒2630 4.9(20~100℃) Rc 30
70 Cr3C2 高温耐摩耗用 1890 8.82(20~120℃) Rc 37~40
72 12% Co-WC 耐摩耗用 軟化点1260以上 10.98(150~980℃) Rc 55~60
73 17% Co-WC 耐摩耗用 軟化点1260以上 ━━ Rc 60
81 25%(Ni-Cr)-75%Cr3C2 高温(540~815℃)における耐摩耗用 軟化点1400以上 ━━ Rc 50
101 2.5% TiO2-Al2O3 耐熱、耐摩耗、溶融Zn、Al、Coに強い ≒2010 ━━ Rc 55
105 Al2O3 耐熱、耐摩耗、断熱、絶縁 ≒2035 7.4(20~1480℃) Rc 60
106 Cr2C3 540℃までの耐摩耗 2435 7.4(20~1480℃) Rc 60
136 Cr2C3-5%SiO-3%TiO2 540℃までの耐摩耗 2435 9.0(20~1100℃) Rc 70
201 安定化 ZrO2 断熱845℃以上でのエロージョン 2535 9.0(20~1100℃) Rc 25
202 ZrO2-20% Y2O3 断熱845℃以上でのエロージョン 2480 10.1(1200℃) Rc 30
210 24% MgO-ZrO2 耐高温アブレ-ジョン、溶融金属にねれにくい 2140 ━━ Rb 105
438 75%(12%Co-WC)-(Ni-Al)-自溶合金 耐摩耗用 軟化点1040以上 ━━ Rc 65
447 5%mo-5.5%Al-残Ni 鋼に自己結合 軟化点1650以上 ━━ Rb 80
450 Ni-5%Al 鋼に自己結合 ≒1430 15 Rb 50
461 NiCoCrAlY 982℃までの耐熱、耐食 ≒1400 ━━ Rc 24

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ワイヤー溶射(肉盛)


特性


被溶射体は低温(200℃以下)で加工され、歪・及び材質の変化は生じません。
皮膜は層状で気孔を有し、大気中のO2・N2等と反応し、一部は酸化物、窒化物と成り、油溜りとして耐焼付効果、硬度上昇による耐摩耗性の向上等に役立ちます。


≪溶射材料≫


種類 JIS記号 組成 参考 硬さ 相当銘柄
MCS 1 0.1~0.25%C炭素鋼 切削容易、軸類、鋳物の巣埋め Rb85~90 スプラスチール#10
MCS 2 0.25~0.65%C炭素鋼 切削容易、軸類、複合溶射下地内面 Rb90~95 スプラスチール#25
MCS 3 0.65~0.95%C炭素鋼 切削可能、軸類、内面、表面硬化 Rc35~40 スプラスチール#80
MCS 4 0.95%C以上炭素鋼 切削可能であるが研削が望ましい、表面硬化 Rc40~45 スプラスチール#100
MLS 1 1.5%Cr,4%Ni,
1~3%Mo低合金鋼
切削可能、粒子間結合が強い
厚い溶射可
Rc20~25 スプラスチールLS
MLS 2 0.9%C,1.8%Mn,
2.0%Cr低合金鋼
切削可能であるが研削が望ましい  
MLS 3 1.0%C,1.5%Cr低合金鋼 粒子間結合が強い  
ステンレス鋼 MSUS 1 13%Cr高炭素ステンレス鋼 切削可能であるが研削が望ましい。粒子間結合特に強い。全面的な衝撃にも耐える。 Rc35~40 メテコロイ#2
MSUS 2 18%Cr,8%Niステンレス鋼 切削容易、収縮大、厚盛および内面には要注意 Rb80~90 メテコロイ#1
MSUS 3 8.5%Mn,4~6%Niを含む18%Cr低炭素ステンレス鋼 収縮小、耐食性、耐摩耗性 Rb80~90 メテコロイ#5
MSUS 4 18%Cr,12%Ni,
Moステンレス鋼
耐食性 Rb80~85 メテコロイ#4
ニクロム MNCr 60%Ni,15%Crのニクロム合金 耐熱性、耐食性 Rb50~55 メテコロイ#33
特殊アルミニウム青銅 9%Al,1%Fe,90%Cu 仕上良好、耐摩耗性、耐食性 Rb80~85 スプラブロンズAA
ホワイトメタル 7.5%Sb,3.5%Cu,
0.25%Pb,89%Sn
軸受 Rb55~60 スプラバビットA
モリブデン 99.95%Mo 耐摩耗性、鋼に自己結合 Rc35~40 スプラボンド

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ワイヤー溶射(防食)


特性


ワイヤー溶射の中で亜鉛・アルミニウム合金による防錆・防食を目的とする溶射をメタリコンと称しております。メタリコンは被溶射体をほとんど加熱しないので、寸法上のくるいを生じることなく、希望の膜厚を得ることができます。
又、溶融メッキのように槽の制限を受けないため、どんな大型素材にも加工できます。また現場においても加工でき、更に溶射された皮膜上の塗装の密着性が良いなど多くの特徴を有しています。


≪亜鉛≫ 表、種類、記号及び最小皮膜厚さ (JIS H8300)


種類 記号 最小皮膜厚μm 参考
ISO対応記号 使用方法
亜鉛溶射 40 ZS40 40 Zn 40 封孔処理して塗装用下地として使用する。
亜鉛溶射 80 ZS80 80 Zn 80 溶射のまま使用する。溶射後封孔処理した状態で使用するか、又は塗装用下地として使用する。
亜鉛溶射 120 ZS120 120 Zn 120
亜鉛溶射160 ZS160 160 Zn160
亜鉛溶射200 ZS200 200 Zn 200
亜鉛溶射300 ZS300 300

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≪アルミニウム≫表 種類、記号及び最小皮膜厚さ (JIS H8301)


種類 記号 最小皮膜厚μm 参考
ISO対応記号 使用方法
アルミニウム 80 AS 80 80 Al 80 封孔処理して塗装用下地として使用する。
アルミニウム 120 AS120 120 Al 120 溶射のまま使用する。溶射後封孔処理した状態で使用するか、又は塗装用下地として使用する。
アルミニウム 160 AS160 160 Al 160
アルミニウム 200 AS200 200 Al 200
アルミニウム 300 AS300 300 Al 300
アルミニウム 400 AS400 400

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≪屋外使用環境の種類と最初に補修を必要とする年数≫


屋外使用環境 最初の補修を必要
とするまでの年数
溶射皮膜の種類
封孔しないAl溶射 封孔しないZn溶射 封孔 した
Al溶射
封孔した
Zn溶射
Al溶射と塗料 Zn溶射と塗料 封孔したAl溶射と塗料 封孔したZn溶射と塗料
汚染されてない内陸部の大気に屋上で使用される皮膜 非常に長い
(20年以上)
150
(AS160)
150
(ZS160)
100
(AS120)
150
(ZS160)
30-100      
長い
(10~20年)
100
(AS120)
100
(ZS120)
  100
(ZS120)
30-100 30-100    
汚染された内陸部の大気に屋上で使用される皮膜 非常に長い
(20年以上)
150
(AS160)
250
(ZS300)
150
(AS160)
150
(ZS160)
    60-100 60-100
長い
(10~20年)
100
(AS120)
150
(ZS160)
100
(AS120)
100
(ZS120)
       
中程度
(5~10年)
  100
(ZS120)
           
汚染されていない海岸の屋上で使用される皮膜 非常に長い
(20年以上)
150
(AS160)
250
(ZS300)
150
(AS160)
150
(ZS160)
       
長い
(10~20年)
  150
(ZS160)
100
(AS120)
100
(ZS120)
    30-100 30-100
中程度
(5~10年)
  100
(ZS120)
           
汚染された海岸の屋上で使用される皮膜 非常に長い
(20年以上)
250
(AS300)
350 150
(AS160)
250
(ZS300)
       
長い
(10~20年)
150
(AS160)
250
(ZS300)
100
(AS120)
150
(ZS160)
    60-100 60-100
中程度
(5~10年)
  150
(ZS160)
  100
(ZS120)
       
普通に乾燥している所(構造物)で内部に使用する皮膜 非常に長い
(20年以上)
100
(AS120)
100
(ZS120)
           
長い
(10~20年)
        30-100 30-100    
構造物の内部で湿気の多い所で用いる皮膜 非常に長い
(20年以上)
150
(AS160)
150
(ZS160)
100
(AS120)
100
(ZS120)
    30-100 30-100
長い
(10~20年)
100
(AS120)
100
(ZS120)
           
淡水に用いる皮膜 非常に長い
(20年以上)
150
(AS160)
150
(ZS160)
           
長い
(10~20年)
    100
(AS120)
150
(ZS160)
    30-100 30-100
海水飛散地帯又は、塩がよく掛かる所に用いる皮膜 非常に長い
(20年以上)
    150
(AS160)
250
(ZS300)
       
長い
(10~20年)
  250
(ZS300)
  175
(ZS200)
60-100 60-100    
中程度
(5~10年)
  150
(ZS160)
100
(AS120)
150
(ZS160)
       
短い
(5年以下)
  100
(ZS120)
           
海水に浸せきする所に用いる皮膜 非常に長い
(20年以上)
    150
(AS160)
250
(ZS300)
       
長い
(10~20年)
  250
(ZS300)
100
(AS120)
150
(ZS160)
60-100 60-100    

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